吉本由美さんは猫と暮らしてきた。 大人のおしゃれ

大橋 もう何匹目?
由美さん え〜、計算できない。
大橋 1番最初はいつだったの?
由美さん 最初はここ(熊本に実家)だよ、子供の時。
大橋 そっか、東京に出てきてからは?
由美さん 最初高田馬場に住んでた時、歩さんのところに行っている頃(1973年頃)。高田馬場の古い一軒家ね。最初はグレーの子猫を小学生が持ってきたの。拾ったけどアパートでお母さんが飼っちゃいけないって言うので、飼い主探すまで預かっていてくださいって言うのよ。なんで?って聞いたらここはお庭があるしって。だから仕方なく預かったの。もちろん全然迎えに来なかったよ。それが東京で最初の猫。22、3歳の頃ね。

大橋 でも犬がいたでしょ。
由美さん そうアフガン。あの子は本当に優しい子でね、抱っこさせる。抱っこして寝ることもあったよ。私とすごい仲良かった。
大橋 2人が座っている後ろ姿の写真を見せてもらったことがあったけど、どっちが人間だかわからなかったね。あの犬でしょ?
由美さん そう。大きな犬ってやっぱり優しいよ。小さいのはワンワンっていうけど、大きいのはうるさくない。
大橋 その子が一緒だったんだね。

由美さん そうこうしているうちに、浦島太郎みたいだけど家のすぐそばで子供たちが白い猫をいじめていたの。何するのっ!て怒って連れて帰ってきたの。見たら目から血が出てる。病院に連れて行ったら、この子は未熟児で生まれたらしく目が片一方できてなく、そこから汁が出てるって。じゃあ、目が見えるようにはならないんですかって言ったら、眼球がないって言うのよ。確かに真っ青なの。それで治療してくださいって言ったら、あなた飼うの?って言うから仕方がないので、って言ったの。そしたら、えっ!って。この病院の人いやな感じって思って、そのまま連れて帰った。それが2匹目。
大橋 2匹目。
由美さん それでその子たちがメス同士だったからそれぞれ子供を産み始めて。
大橋 え〜。その時は去勢しなかったんだ。

由美さん うん、小っちゃいからまだ避妊手術をするには早い、って思ってた。おっぱいが大きくなってきて、グレーのほうが黒い猫4匹産んだ。トランクの上で産んだから、最初に産んだ2匹が落っこちちゃって2匹死んで。手を伸ばしてこれかと思ってつかんだの。黒い子2匹は生きてた。
大橋 そうなの。もう1匹は。
由美さん 白猫は、白いのとかブチを6匹も産みました。それで黒い猫は好きなので自分で飼うことにしたんだけど、ブチ6匹は『アンアン(マガジンハウス)』に子猫もらってくださいって出したらもらってもらえた。それ1回産んで避妊手術をしました。黒猫のほうは2匹がすごいかわいかったんだけど、これもマガジンハウスの編集者の淀川美代子さん(後に『オリーブ』『アンアン』『ギンザ』の編集長をされる。現在は『クーネル』の編集長)が担当の猫特集号に載せてもらった。でも1匹が交通事故で死んだの。お家の前でぺっちゃんこ。何回もオートバイとかが通ったらしくてね、もう張り付いてるのよ、道に。朝起きてみんながこうやって窓から外を見ているからどうしたんだろうって私も見た。ボウちゃんっていうんだけど、あっボウちゃん!!
大橋 本当に。

由美さん そういう時にね、兄のお嫁さんのお母さんのお葬式だったのよ。私はとにかく剥がして、そしてすぐに埋めて大急ぎで行ったんだけど、もう悲しくて、悲しくて。そこでものすごく泣いたの。そしたら会ったこともないのにどうしたのって兄が。あはは。
大橋 あはは。
由美さん もう言えないからさ。それで泣きながらボウちゃんが成仏するように一生懸命祈ったの。
大橋 やっぱり交通事故は多いのね。結局子猫さんたち全部、家にいたの?
由美さん ボウちゃんが死んで親が2匹と黒いブッちゃんていう子が残って3匹。そこに黄色い縞々の子が来たのよ。
大橋 なんで?

由美さん ご飯があるから来たんだよ。すごくね、控えめな子でガンガン入ってこない。お家の外の廊下にシュッと座ってずっと家の中を見ている。でも私も貧乏だから、そんなに飼えないからだめだよって。もう大きい子だったからね、そこまで大きくなったってことは餌を捕る能力はあるんだろうなって思ったからダメだよって言ってたんだけど、いつもこうやっているから仕方なく飼うことになった。その子、ハチちゃんて名前。だから4匹。4匹連れて高田馬場から武蔵小金井に移ったの。

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第2話