「アルネ」の大橋
「アルネ」は2002年~2009年にわたって大橋がひとりで企画・編集・撮影・取材をしてつくっていた季刊の冊子です。タイトルの「アルネ」は大橋のもの選びの基本となっているカトラリーのデザイナー、アルネ・ヤコブセンからつけました。
そもそもの「アルネ」の構想が動き出したのは今から15年ほど前のこと。ずっと続けてきたイラストの仕事が少なくなってきて「だったら好きなことをしてみたい、何かおもしろくできる仕事はないか?」と思案するところから始まりました。大橋にとって決して愉快とはいえない状況で迎えた転機です。しかし結果的に「アルネ」は「個人がつくり、届けたい人にちゃんと届くパーソナルな雑誌」の先駆的存在となり、しかもそれが長く続いた数少ない雑誌のひとつとなりました。
「平凡パンチ」や「ピンクハウス」の世代の方にはイラストレーターとして知られる大橋が、若い世代には「アルネ」をつくっているおもしろくて気になる人として注目されるようになったのです。
すごくラッキー
「いろんな方に恵まれて、協力していただいて30号まで続けさせてもらえた。自分はすごくラッキーだった」と大橋は言います。
「小規模だけれどこんなおもしろいことができるんだ。これなら自分でもできるかな」と気づかせてくれたある小冊子との出会い。大橋が考えている事を「おもしろいと思う」と後押ししてくれた編集者。撮影は「久美さん(大橋の本名)が全部撮るのがいい」という旧知のプロのカメラマンからのアドバイス。画素数が少なくて印刷に回すのは無理な写真を大橋から見せられて驚きながらも「でもこれはこれでおもしろいかも。やってみましょう」と引き受け、大橋のイメージをよいかたちにしてくれたグラフィックデザイナー。そしてなにより取材をひきうけてくださった方たちと、雑誌を買ってくださった方たち。
「ネットで売るのも最初は必死でしたし、途中でデジタルカメラは何台も買い替えました。でも時代がずっと動き続けて、だれでも雑誌がつくれる時代になっていきました。タイミングもよかったと思います。でもいちばん大きかったのは私がプロではなかったことだと思います」
好きなものしか出さない
「雑誌をつくるというのはこういうこと、と知らないから進めたところもありました。取材方針というのもあまりない。脈絡なく自分が勝手に好きなものしか出さない。すべてひとりだから編集長に『それだめだよ』と言われるようなこともなしにやってきましたから」。
大橋は淡々と話すけれど、たぶんそのすべてが時代にあっていたのです。本人はタイミングがよかったというけれど、タイミングもまたイラストレーターとして常に時代を意識してきた大橋だからこそ出会えたのだと思います。
「アルネ」を終了した2009年以降、大橋は「別冊アルネ」というかたちで本をつくり「大人のおしゃれ」を刊行してきましたが、どの雑誌にも本にも“今の時代”が映し出されています。それは今回の「アルネ・もう1回」もくっきりと変わることがありません。ぜひお手にとり、お読みいただければと思います。
書店での発売は9月15日から。
ネットでのご注文も受け付けております。
蔦屋書店のイベントのお知らせ
今回の「アルネ・もう1回」の発売を記念して9月15日から代官山と湘南の蔦屋書店でイベントをさせていただくことになりました。特設コーナーを設け「アルネ」のバックナンバーや「アルネブックス」を並べます。また代官山では「アルネ・もう1回」を出すきかっけとなった
マヨルカ島のパーリャバッグもご覧いただけます。
9月30日(金曜)には
代官山蔦屋書店で、10月16日(日曜)には
湘南蔦屋書店でそれぞれトークイベントも開催いたします。トークイベントにご参加いただいた方には「アルネ・もう1回」で取材させていただいた
御菓子丸の杉山早陽子さんのお菓子を召し上がっていただく予定です。どうぞご期待ください。
湘南蔦屋書店トークイベント詳細は
こちらからご覧ください。